あんじょーら

LOOPER/ルーパーのあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

LOOPER/ルーパー(2012年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

SFの傑作との噂を聞いた事、何よりジョセフ・ゴードン=レヴィット主演!ということで観に行きました。タイムトラベルSFサスペンスアクションとも言うべきものであり、ネタバレを避けるために言えないんですが、かなり面白かったです!



2044年のアメリカ。ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は未来から送られてくる人物を殺す稼業に手を染めている殺し屋です。組織の一員であり、未来から送られてくる人物を有無を言わさず転送された瞬間に撃つことでアッパーな生活を送っています。30年後の未来ではタイムトラベルが可能になっているのですが、管理が厳しく、タイムトラベルを行うのは犯罪組織だけであり、尚且つ未来の世界では単純に人を抹殺することが極度に管理された社会であるので難しいことから、過去へと送り込むことで殺人を行っています。そんな組織に属するジョーたちは自らをルーパーと呼んでいます・・・というのが冒頭です。



シリアスなタイムトラベル、ループモノとして非常に新しい切り口、斬新なスタイル、そして見事な結末という意味で個人的には大満足の映画でした。もちろんジョセフ・ゴードン=レヴィットの演技も最高でしたし、ポール・ダノも出演しているとは知らなかったので嬉しい驚きでした。




ガジェットも近未来にふさわしく、しかしただの近未来ではないわざと古臭い部分を都市の外に残しつつ、ノスタルジーさえ感じさせる世界観の作りこみが素晴らしいです。観客に分からせる様々な設定の見せ方が説明のための説明ではなく、物語の進行上不自然でない理解のさせ方で、ココも上手いと思いました。また、新たな軸として現在の自分対過去の自分という枠組みを作ったのも新鮮な驚きです。いろいろ制約があるところを、かえって上手くサスペンスフルに演出するのは良かったです、ある意味ミスリードな演出も許容範囲内だと思います。




ちょっとループモノである他作品に触れます。




ループモノと言えば、やはり有名なのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズですが、最近見た中ですと「ミッション:8ミニッツ」が新たなモノですし、新境地を開いた、と思います。日本のお家芸アニメで言えば「シュタインズ・ゲート」と「魔法少女まどかマギカ」もループものとして外せない新たな地点に到達した進化した作品だと思います。個人的な感想ですが、「シュタインズ・ゲート」は非常に掴みの強い、謎があってしかもキャラクターが非常に立っていて導入として素晴らしいのですが、物語が進んでいくほど熱は醒めていく構造になってまして、何故ならネタバレが起こっているループモノなわけでして、スタートがゴールというループの典型的な作品に対し、「魔法少女まどかマギカ」の方は全く逆で、導入が非常にありふれ過ぎていてキャラもそれほど確立されておらず、主人公は傍観者的な立場から出ない、ゆっくりといた立ち上がりではあるものの、終盤の展開がすさまじく、パラレルワールドというこれまたループモノとして典型的な作品だと思います。つまり対になっていると感じるくらいループモノとしての2つの典型的なゴールである、スタート地点に帰ってくるモノと、パラレルワールドに行くモノの2つを掛け合わせた上で違った着地をしてみせるのです。




そういったループモノの新たなマイルストーン的作品が「LOOPER」だと思いました。見せ方の演出と編集は非常に面白いと感じました。



SF作品が好きな方、近未来モノ(あまりに突拍子も無く遠い未来ではない、ある程度現実と地続き感ある未来モノ。私は大好きです)が好きな方にオススメ致します。













アテンション・プリーズ!



ちょっとだけネタバレありです。未見の方はご遠慮下さいませ。





































































主人公を2人にして同時代に生存させることでのタイムパラドクス的な配慮がまるで無いのが、逆に気持ちいいくらいで、しかも映像のクリアさや、展開のスピードなんかで気にさせない配慮があるからこそだとは思います。その手腕が素晴らしいからこそ、気にならないのではないか?と感じます。ブルース・ウィルスに似せる、というのは仕方ないのかも知れませんが、いつものジョセフ・ゴードン=レヴィットよりイカツい感じにはなっていますが、仕方ないかな、と。かなり美味しいところをほぼ全てブルース・ウィルスに持っていかれてるんですが、物語後半禁断症状が抜けてからのシドとの交友辺りからの演技は最高です。前半の享楽的な部分ももちろんカッコイイんですけれど。




記憶がぼやける、とか過去の自分が改変することで新たな記憶が芽生えるだの、あまりに複雑なので語り合ってる時間が無いとか言う一見「逃げ」と捉えられかねない解釈をストーリィの中に上手く取り込むことで一定の説明と意味をぼかす事に上手く対処出来ていますし、何より見せたいのはソコじゃない、という雰囲気を醸し出すのが上手く行えていると感じました。




拷問シーンも新たな演出ですし、非常に恐ろしいです。現代に過去の自分が現れることでのパラドックスを考えさせない上に、現在の自分に危害を加えると過去に来ている自分に影響が出る、という拷問は全く恐ろしい手段だと思います。しかもそれを見せておくことで、より現在の自分対過去に自分というこの映画の軸の部分に更なるテンションをこめる事に繋がっているのも良かったです。



外せないのがPK演出で、これどう考えても「童夢」大友克洋著の影響を感じるんですよ!もし「AKIRA」ハリウッド映画版がまだ滞っているなら、監督ライアン・ジョンソンにしたらいいのに!というくらい見事な演出でした。この映画はループモノとして始まりますが、PKモノで終わるのが見事。そしてなんと言っても脚本が素晴らしく、この結末がかなり響きました。だからこそ主人公たりえたんですよね、ジョーの決断の重さがカッコイイ。


なんだかんだ言いつつも、個人的にはジョセフ・ゴードン=レヴィットが出演してると2割り増しで面白く感じてしまう身体になってしまっていると思います。「ハーフ・デイズ」なんて特に引っかかるところ無かったんですが、結局見て後悔まではしないですもんね。