ダミアン君に恋してる

パフューム ある人殺しの物語のダミアン君に恋してるのレビュー・感想・評価

4.7
超人的な嗅覚を持つ男の才能が欲したのは、美しい女性の身体から発せられる香りだった。彼はその香りを使い、世にも残酷な【究極の香水】を作りあげる───

天地がひっくり返った。
もの凄い、とんでも映画っっ!!!!!

これ今までずっと何故か観て来なかった作品だったけど、観ない事で損していた。ここまで芸術性の高い映画に私は出逢った事が無いかもしれない。

この物語の主人公ジャン=バティスト・グルヌイユは、ハンニバル・レクター博士の上をいくロマン派 殺人鬼、美の探究家なのでは。

危険かつグロテスク、魅惑で官能的。
悲劇のサスペンスであり、壮大な愛のファンタジー。

"食べちゃいたいほど可愛い(愛しい)"とは良く言ったものだ。本作はこの言葉が持つ本当の意味を恐ろしく完璧に描いている。

──「死」という、束の間の戯れ ──

神から与えられた「愛」という感情をはじめて知るそのための犠牲ならば、人を殺めるという重罪も罪ではなくなるのかもしれない。

主の血肉を我らの中に…

イエス・キリストが自ら犠牲になるそれと、どこか似ているような気さえする。

見せられたものが魅せられたものだけに、残り香が強烈。

主演のベン・ウィショーさんの、繊細に恋する青年と異常な奇人変態の両面、天使と悪魔を併せ持った演技が圧巻!!!

この映画で何が一番グロテスクなのか…主人公の異常心理を芸術の域まで高めた彼の最高の演技こそがまさにグロテスクそのものだと感じた。本当に群を抜いて素晴らしい。

劇的なクライマックスはまるで巨大な絵画を見ているような息をのむ美しさ。

媚薬のそれに本性を向き出しにされ理性を激しく乱され、狂おしいほど主を貪り喰う愛の感情を、私も味わってみたい。

【芸術=死にも値する異常偏愛】

殺しを美化し、果ては奈落に突き落とす。
気味の悪さがかえって刺激的に心地がいい。

天と地の創造物(香り)を魅惑的に描いた奥深い異色作に、私の感性は歓び、嘆き、またとない不思議な感覚で満たされた。

2019年始まって早々、思わぬ衝撃作品に出逢った。

今年も"愛をさがす旅路の果て"に何があるのか、私自身、好奇の欲を楽しみ尽くしたい。

*☆Keyword*☆
『 Delight Single Teardrop 』