まぬままおま

舟を編むのまぬままおまのレビュー・感想・評価

舟を編む(2013年製作の映画)
5.0
大傑作です。なぜみてなかったのか、いや多分、いま観なければいけなかったんだと思う。

ドイツ語のBerufとしての仕事を、これが天命だと人生をかけてやりたいことを見つけないといけないですね。それが辞書作りと言ったはたからみたら地味でつまらないものであってもいいんです。言葉の海を渡る船を編むなんて素晴らしい仕事じゃないですか。そしてかけがえのないドラマが絶対にある。

相手に言葉を伝えること。その意味や意図は伝わらないかもしれない。伝えられないかもしれない。馬締の恋文のように。しかし相手が読み取ってくれるかもしれない。ドラマが生まれるかもしれない。その瞬間は必然的に起こるわけでもないけれど、その可能性に賭けてそれでも言葉を尽くさなければいけない。本当にそう思う。

そして言葉じゃなくてもいい。香具矢のように料理の場合もある。それは言葉で切り分けられ解釈されるかもしれないが、立派な「月が綺麗ですね」だ。

石井監督は言葉の代わりに映画を選び、尽くしたのだろう。気持ちがストレートに届いたから傑作と感じたのだと思う。

間に合わないときはある。尽くしたとしても、運命が待ってくれない時はある。けれど尽くした言葉は、別の誰かに届くことだってある。時空間を渡る言葉。相手の心を揺らす言葉。

言葉を尽くす仕事を私はしたい。