久しぶりに再鑑賞したのでレビュー
この物語は、辞書作り版
「チ。- 地球の運動について-」である。
想いは誰かに伝播し、バトンを受け取り、繋いでいく。ゴールは見えなくとも、繋いだバトンを落とさないように走り続ける。
辞書作りといえば、三省堂国語辞典の見坊豪紀。
彼をだいぶマイルドにしたっぽい(モデルにしたかは知らないけど)松本先生率いる玄武書房辞書編集部たちの長きにわたる一冊の辞書を作る物語。
コミュニケーションが極端に苦手だった馬締が、大家のおばちゃんに「辞書を作るってことは、言葉を知るってことだろ? そしたらその言葉、使わなきゃ!」と言われ、翌朝から変わっていこうと努力する。
辞書作りに興味がなかった西岡が、馬締の熱心さに打たれ、次第に辞書作りに興味を持ち始め、辞書編集部に対する意識が変わっていく。
ファッション誌から異動になり、嫌々辞書作りの仕事をしていた岸辺が、馬締の辞書に対する熱意を見て、次第に辞書作りに打ち込むようになっていく。
こういった、誰かが誰かに突き動かされて変わっていく(成長していく)というジュブナイル性が随所に出てくる。
なんというか、地味なんだけどとにかく熱い。
映画全体に流れる静かで優しく、しかし熱い空気感はとても心地よく。自分も何かに打ち込みたい、とそんな情熱のような何かを思い出させてくれる名作です。