Taketo

舟を編むのTaketoのレビュー・感想・評価

舟を編む(2013年製作の映画)
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現象が先なのか?化学が先なのか?と同じような考えが言葉にもあるなと感じていました。つまり辞書や文法が先なのか、言葉が先なのか?そしてあくまでも言葉あっての辞書なのだなと思いました。そのため馬締を初めとする登場人物達は用例採集という方法で街中に溢れる言葉を拾い集めます。その行為はまさしく馬締が見ている夢と同じです。
序盤は辞書づくりという馴染みのない世界観を見せつつそれには時間と根気を必要とするのがわかり面白いです。そこから馬締の辞書に一生を注ぐ決意の潔さはとてもカッコいいです。かぐやとの恋愛の発展も予定調和ですがいいと思います。
馬締が辞書制作という共同体に身を置き仲間を作り、人生を充実させている姿もとても魅力的でした。
しかし、馬締の恋が成就してからはただひたすらに黙々と辞書を作っている様にも思いました。 タイムリミットは設定されているものの、間に合うかどうかという焦りも特には抱かなかったです。
その黙々具合からか、後半のかぐやの存在は馬締からないがしろにされているように感じました。かぐやは馬締にご飯を作り、そっと部屋に置いといてあげるほど貞淑な嫁なのかもしれないですが、馬締はそれを食べずに仕事に没頭しています。それだけ辞書づくりに熱意を持ったサラリーマンとも取れますが、少し酷い夫にも見えるように思いました。板前であるかぐやが、作った料理を昔のように夫が「美味しい」と言いながら食べてもらえないで、どういったところで満たされているのかな?と思いました。
なのでもしかしたら実際は馬締は辞書を作りたい、かぐやは板前をやりたいと言った点でお互い利害関係が一致しているから付き合っている。だから子どもはいない方がいいというとても現代的な夫婦関係なのかもしれないです。
もしかしたら、馬締を支えてあげる関係に満たされているのかもしれないですが、明確にそういったシーンもなかったように思いました。
なので前半は良かったのですが後半から辞書づくりでも、夫婦関係でもなんでも良いのですが何かにもっと深く突っ込んでいって欲しいなと感じました。
登場人物に悪い人はいなくてとても暖かい作品だとはおもうのですが、それと同時に物足りなさも感じました。
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