トメさん

舟を編むのトメさんのネタバレレビュー・内容・結末

舟を編む(2013年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

出版社の営業として、まったく才能のないまじめくんが、辞書編集という天職にであった話。これが、天職だとわかったときの、まじめくんの嬉しさ。先生のあつい言葉を反芻する瞬間、普通の人にはまったく響かない言葉が自分のなかで鳴り止まない音叉となり心を掴んで離さない。そのときが、まじめくんが自分はこの世界で生きて行く、生きていけると感じた瞬間なんだと思う。その瞬間だけで、人は苦手な一歩だって踏み出せる。まじめくんにとっては人とわかりあうということが苦手だったみたいだったけど、それをいとも簡単に克服してしまった。天職すごい。それと忘れてはいけないのは、逆に自分がやりたいこと、生きて行くことの葛藤、悩み、苦しみが描かれていてよかった。自分が、その 道で生きて行くと決めたからこそ、その道の険しさが、わかるし、そのゴールもどんどん遠くなってしまう。舟を編むと決めたからこそ、海の怖さを知り、編んだ舟が壊れたときにどんな恐ろしい海に放り出されてしまうかということ意識し始めるまじめくん。天職だからって、楽しいばかりではなんだな。


この映画のなかでは、言語の大切さももちろん一つのポイント。下宿のおばちゃんが言ってたけど、言葉があるんだから、それを使わないとだめ、せっかく昔のひとが作ってくれた気持ち、想いを伝えることや、交流のために大事なツールなんだから使わないと損。そして、ちゃんと正しい意味で使わないといけない。また、大事な告白シーンでもあったが、言語を使ったとしても「伝わないと意味がない」ということも大事。そんななかで、西岡さんところのカップルは、まったく話している言語を正しく使っていないし、けなした言葉とかも使っていたけど、逆にあの二人は言語なんてなくても伝わっている。それもすごいことだな。でも、ちゃんと大事なことはちゃんと言語をつかって伝えていた。


辞書作りをし始めたとき、20年かかるって言われた、「○○さんは死んでるかもしれませんね」って西岡さんが言ってたけど、そのとき、一番お年の先生については誰も言及しなかった。というかあえて言及をさけたのかな。みんな、先生はもしかしたらと思ってたのかもしれない。でも今作らないと、間に合わないかもって思って、最後の最後で、間に合いそうだった。でも間に合わなかった。10数年ずっと間に合わせたいと思って仕事するってどんな気分なんだろ。それで間に合わなかったどんな気分なんだろ。もしかしたら、涙なんてでないかもしれない。そんなまじめくんの涙に感動がとまらない。


小説で読んだときもいい作品だなとおもったが、映像でみてもいい作品だった。また本読み直そう。

追記
「僕には短く感じられました」
トメさん

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