ゆうゆ

天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”のゆうゆのレビュー・感想・評価

4.8

深夜3時くらいのNHK再放送の料理番組、かなりむかし たまたま見かけた彼女は その時も蒸らし炒めしながらスープを作っていた。
その丁寧な工程、白いルクルーゼに ピンで留めた張りのある純白のエプロン、やさしい香りが漂ってきそうな 滑らかなスープが出来上がる様子に 明け方まで眠気を忘れて見入っていた。
その時は彼女の名前も存じあげなかったけど その後すぐに同じ白いルクルーゼを買いました。

映画で久しぶりにみる彼女は その頃とほぼ変わらず、きれいに纏められた銀色の髪が引き立つ クリーム色が主体のファッションには アイロンのかかった清潔感のあるエプロン、耳を彩るお洒落にも彼女の品の良さが漂っている。選ぶ言葉も美しく その全体のイメージに 菩薩のようなやわらかさを感じる。キッチンには白のルクルーゼの他 ミルク色の鍋や 長年にわたって大切に使われてきたことを想像させるキッチンツールが 眩しい。
鎌倉の広いお庭とモダンな邸宅で過ごす 移ろう四季に響く自然の音色、花々や草露の美しさ、その中で 変わらず作られてきたスープの温かさが 観ているだけで五臓六腑に染み渡りそうなオーラを放つ。
太陽と雨と大地の結晶から生まれた瑞々しい食材。そのひとつひとつを慈しむように切って炒めて濾す。その何気ない手作業にも彼女の 食材や料理を口にする相手への愛を感じる。

食を通じて人が繋がり 生命を紡いでいく、愛は人の中にではなく 人と人のあいだにあるのだと。半身不随となった父親の介護をきっかけに広がる スープからいただく生命のめぐみ。人が生きていく限り "口から"エネルギーを採り入れることが大切であるという教えと そこにはたくさんの大地の輝きと 人を思いやる愛の連鎖があることを忘れてはならない

劇中に登場する土のアートも素晴らしい。
💿にはなんと むかしの料理番組が特典として付属されてました♩¨̮



2022-210
ゆうゆ

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