しょーご

ザ・マスターのしょーごのレビュー・感想・評価

ザ・マスター(2012年製作の映画)
3.2
ポールトーマスアンダーソン長編全9作品完走。最後の最後が1番難解だったし、ある意味では今後見返す宿題もできてよかったかも。


簡単に彼のフィルモグラフィを勝手に振り返ります。


『ハードエイト』(1996年)
動き回るカメラとお調子者な会話劇、そして師弟関係といった後のPTA作品の原点。カフェでの会話からスタートするところも含めて、彼が退学した結果得た大学からの戻し金で自主制作した『シガレッツ&コーヒー』の延長線でもあると思う。

『ブギーナイツ』(1997年)
個人的にはやっぱりこれが1番好き。本作のレビューで熱弁したOPの秀逸さが何よりも突出している。そしてポルノ業界という側面でとがった映画に見られがち(まあ、とがってはいると思う)だが、栄光、挫折、アフターストーリーという王道ストーリーに乗っ取りながら、各プロット印象的な画づくりをしているところに好感を覚える。70〜80年代のダンスミュージックの使い所、音ハメ画面分割などテクニック的にも、ものすごいことをしていると思う。

『マグノリア』(1999年)
PTAの作品はどれも愛に溢れた作品だが、それが最もわかりやすい形で描かれているのがこの作品だと思う。どんな苦難でもがき苦しんでもなるようにしかならないことを空からの蛙というトンデモ手法で表現するところもまたPTAの感覚。ちなみにアルトマンは同じようなことを、本作と同様の大群像劇『ショートカッツ』にて蛙ではなく地震で描いている。それと、『マグノリア』は映画の中でも指折りの情報密度が高すぎる冒頭だった気がする。

『パンチドランク・ラブ』(2002年)
これまた最高な映画だった記憶。詳しく覚えてないのが悔しいが、ジャケットのショットは本当に息を呑む美しさだった。それと、なぜかプリン買ってマイル貯めてるのをものすごく覚えてる。あと、スーパーのシーン。ちょっと曖昧すぎるから早くもう1回見たい。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)
最高傑作とも名高い本作。だが個人的には、いまいちハマりきれず。俺はつくづくPTAとかアルトマンとかタラちゃんの無駄話が好きなのだと再認識。だってPTAなのに、冒頭15分くらいセリフないんだぜ?ある意味2001年的な荘厳さみたいなのはあった…。それもそのはず、PTAは本作から制作スタイルを一新(町山さん解説)。前作までは明確なゴールに向かって計算しつくされたプロットを紡いでいくのに対して、今作以降は撮りたい画優先で撮っていって後から並べていくらしい。それゆえ説明的な部分が削られているので「はにゃ?」ってなることもしばしば。それでも最後のボウリング場はPTAだった。やっぱボウリング映画にハズレはない🎳

『ザ・マスター』(2012年)
こう並べて書いていくと、なんとなく他の作品には全てPTA自身のある種自伝的な内容が少なからず入っていると思うのだけれど、この作品とPTAの共通項なんなのかしら。中盤のホアキンとフィリップシーモアホフマンの、怒号合戦は目を見張るものがあったなあ。けど正直1番わけわからんかった。

『インヒアレント・ヴァイス』(2014年)
結構はちゃめちゃでおもしろかった記憶。ハードボイルド私立探偵でいうと、どうしてもこれまたアルトマンの『ロング・グッドバイ』を思い出してしまうけど、それに負けずとも劣らない映画だった。最後のカットが印象的で、たしかホアキンが車の中でカメラを見つめながら(かつ少しだけ微笑みながら)エンドロールの流れなんだけどこれ好きなんだよなあ。お茶目さというか。ゴダールの『女は女である』でも同じようにアンナカリーナがベッドの上でカメラを見つめながら(かつ少しだけ微笑みながら)終わっててこれも好きなんだよなあ。この作品見た時にちゃんとこういった演出に名前が付いてて、その説明がされてる文献を見つけたのにただいま迷子中。ああもやもやするーーーー。

『ファントム・スレッド』(2017年)
どう考えてもこの作品だけ1つ浮いてる。全然毛色が違うわけ。まず舞台がアメリカ飛び越えてイギリス行っちゃってるし。それでこのなんとも言えない終わり方。まあ、あれはあれで狂気的な終わり方で、1人のウッドコックという人間の自我が死ぬわけで(生まれたわけでもある)、この生死だったり自我及びアフターストーリーを想起させる展開はある意味平均的なPTA作品の終わり方でもあるのかもしれない。

『リコリス・ピザ』(2021年)
去年の夏この作品を見てから、PTAという存在を知り、ハマりました。クラブマガとか車の故障とかしょうもないことの連続が、結構ツボでハマりました。今考えてみると、この作品からまた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以前の制作手法に戻った??と思えるくらい初期作品に近しい匂いを感じれます。


以上長夜の独り言でした。
どの作品も愛とユーモアに溢れた最高の映画。あと、見てるとパーティーに行きたくなる。
次はリンチ作品をコンプリートしたい!
しょーご

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