れお

空気人形のれおのレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
4.3
私達は自分自身がなぜこの世に存在して心を持っているかを知ることはできない。
私達は世界を知れば知るほど、自分が何かの役に立たなければならないという焦燥に煽られる時もある。自分が社会の代用品であって、自分の後ろにも代用品がいることを薄々感じて自らの存在意義を疑うようになる気がする。空気人形もまた同じ。

作中の人間は温もりを求めて人形やフィギュア、録音した声にすがって不安を埋めるために過食する。でも一歩家の外を出たら何食わぬ顔で街を歩き、仕事に向かう。

本当はみんな誰かに満たされたがっているはずなのに、互いに無関心で自己完結しようとしている。(店員と客、労働者同士、近所付き合いなど最低限のコミュニケーションのみ。空気人形を除いた人間同士が深く関わっているシーンが無い。)空気人形は他人に空気を入れてもらっているのに、人間は自己完結をして、透けないだけで空っぽ。

だからこそ純一は自己完結のしない空気を入れるという行為を何度もやりたがって自らの存在意義を再確認しようとしたのかも知れない。たしかに私も誰かに空気を入れて欲しい時があるし。代用品なんかじゃないって言われたい。

私達が生きているこの一瞬、気づかないだけで、誰かに何かを与えて、誰かに何かを与えられている。それこそが存在意義なのかもしれない。
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