りょう

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのりょうのレビュー・感想・評価

4.4
 ようやく今週末からクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」が日本でも劇場公開されますが、それを意識してか、NHK-BSで3月8日にこの作品が放送されました。NHKがそういう意図だったのなら、なかなか粋だし作品選びも悪くないです。
 最初に観たのは、もう30年以上前ですが、当時はまだスタンリー・キューブリック監督のことをよくわからず、冷戦時代をめちゃくちゃ皮肉ったコメディだと思って、VHSで何度も観ていました。ふり返ってみると、キューブリック監督のコメディって、ここまでストレートな作品はありません。ピーター・セラーズが1人3役というのも、いい意味でふざけているし、他の登場人物のキャラクターも明瞭でわかりやすいです。
 ペンタゴンの最高作戦会議室、B-52爆撃機、空軍基地の3か所をバランスよくクロスカッティングでつなぐ展開は、なかなかスリリングです。それがなんとなく間抜けなところもありつつ、まったく笑えない衝撃の結末を迎えるところも秀逸です。これを冷戦時代の真只中である1964年に劇場公開したなんて…、当時のアメリカやソ連の反応はどうだったのでしょうか。
 ちなみに、BGMの“When Johnny Comes Marching Home”は、ジャズ・オルガン奏者のJimmy Smithの名盤、“Crazy! Baby”に収録されているヴァージョンが最高です。
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