キミシマユウキ

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのキミシマユウキのレビュー・感想・評価

3.9
アメリカ空軍の准将が精神に異常をきたし爆撃機でソ連を攻撃する命令を出してしまうが、ソ連は攻撃を受けると世界中の全生物を死滅させる爆弾を隠し持っており…

『2001年宇宙の旅』『時計仕掛けのオレンジ』の
!!スタンリーキューブリック監督!!
の代表作。
冷戦の世界情勢を背景にした超シニカルなブラックコメディ。
そういえば観てなかったと思い鑑賞。

究極に世界を皮肉っておちょくった天才。

今作は題名の異常な長さだけ皆に知られていると思うが、その物騒なタイトルとは裏腹に中身はかなりコメディ作品。
なんならキューブリックの作品の中で一番笑えるんじゃないだろうか?(まだ6作品しか観てないですが)
アメリカを、ソ連を、世界を小バカにして

「ほらお前らこんなに愚かなんだぜ?」

と映画を通してキューブリックに喧嘩を売られてるような気分。
政府の高官は基本利己的ないしは異常者しかおらず、作中でまともな意見を言ってるキャラが一人いるかいないかのレベル。
そのくせ爆撃機B-52の作り込みは細部までかなり再現されているようで国家機密をなぜ知っているのかと美術チームがFBIの捜査対象になったとか。
そんなエピソードすら笑えてしまう作品だ。

キャストはほとんど知らないが、面白い試み。
主人公のストレンジラブ博士、アメリカのマフリー大統領、そしてイギリスのマンドレイク大佐が同じ役者!
ピーターセラーズ。
すでに故人なのは残念だが、クレジットを観るまで三役同じ人物だとは気づかなかった。
ストレンジラブ博士は主人公のくせに登場シーンは二回ほどしかない数分。しかしその強烈すぎる印象は忘れられないだろう。ラストの締めくくりも彼のおかげで気持ちのいいものに。
マフリー大統領は作中唯一の良識人。巻き込まれまくっていてただただ可愛そうです。
マンドレイク大佐も巻き込まれてかわいそうです。
あとは核弾頭に乗っかってカウボーイしてるアホとかひたすらソ連に攻撃したがってるガム嚙みまくりのクチャラーとかがいました(雑)

ラストの曲と後ろの映像でなんだか爽快感すら覚えてしまう怪作。
キューブリックのキレッキレなセンスが光っている素晴らしい作品だ。

~オマケ~
一応核戦争が起きちゃうといった感じの内容なのでタグの

#キミシマムザウォーセレクト

に追加しておきます!気になる方はチェック!

戦争皮肉映画好き、キューブリック監督のセンスを確認したい方、そしてこのクソ長いタイトルを覚えてドヤ顔したい方にはオススメの作品。