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ゼロ・ダーク・サーティのレクのネタバレレビュー・内容・結末

ゼロ・ダーク・サーティ(2012年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

巨額の予算を使いながらも一向にビン・ラディンの行方を掴めず、閉塞感の漂うCIAの追跡チームに20代半ばの小柄な女性分析官マヤが抜擢される。
CIAのパキスタン支局へ飛んだ彼女は、過酷な取り調べに戸惑うも捜査は依然として困難を極め、その間にもテロが続き、ついにはマヤの同僚が犠牲になってしまう。

CIA全面協力の基、ビン・ラディン殺害事件を映画化した作品。
自分の印象では社会派ドラマというよりはヒロイックに描いたプロパガンダ作品。
とはいっても、見せつけられる映像は緊迫感のあるドキュメンタリーのような出来栄えで圧倒される。

実際の拷問シーンは恐らく今作の描写を遥かに超えるものだろう。
巨悪であるテロリストが生半可な拷問で落ちるとは思えない。
娯楽映画としては十分だが、この事実を隠蔽したような描写は寧ろ嫌悪感しか残らない。
しかし、まるでノンフィクションかのような爆弾テロと隣り合わせの状況。
CIAの計り知れない緊張感と使命感。
そしてクライマックスの襲撃シーン。
どれも丁寧な作りで見ごたえ十分。
映画としての出来は非常に素晴らしいものだと思います。

テロリストと戦うCIAという政治的プロットの中、個人的な復讐劇が垣間見える。
復讐を果たした先に何があるのか。
そこを掘り下げて見てみると更に面白いと思います。
後味悪い系なのでいい気分にはなりませんが。

若くしてCIAへ配属されたマヤ。
彼女は8年という歳月をビン・ラディンへの復讐の為に費やす。
ラストシークエンスからも見て分かるように、復讐という目的を達成し、同時に目的を失った彼女の表情は晴れやかなものではありませんでした。
ビン・ラディンを暗殺し、目的を果たしたところで、テロは無くならないのだという虚無感や絶望感とも取れる表情を見せられたように思います。
復讐は何も生み出しません。
単なる勧善懲悪ではなく、戦争の虚しさ、悲しさ、恐ろしさを語る重苦しさの残る作品でしたね。
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