Masato

ゼロ・ダーク・サーティのMasatoのレビュー・感想・評価

ゼロ・ダーク・サーティ(2012年製作の映画)
4.5
「デトロイト」に向けて予習

ジェームズキャメロンの元妻であるキャスリンビグローが監督。
とてつもなく重厚な映画を作りますね。そして主人公の描き方が素晴らしい。カッコいい。

兎にも角にも、自分がこの映画でツボを押されまくった点は「重厚な演出」これに尽きます。
BGMがほとんどなく、ただひたすらとブツ切りに映像を重ねていく。この淡々とした感じが、ドラマティックではなくリアリスティックな雰囲気を醸し出す。より実録映画らしい。余計にBGMを垂れ流すとどこか嘘臭く感じてしまう。そう感じてしまうほど、虚構に近づいてしまう。それが全くなかったところが良い。

ビンラディンを暗殺するシーンは圧巻の一言。ミリオタはぐうの音も出ないリアルさ。立ち回りから装備から何まで興奮しっぱなしでした。あんなにサイレンサーの消音効果あるもんなんですね。

いきなり国がやることとしてはタブーな事実、捕虜の拷問シーンから始まる。トレーニングデイの「狼を狩るには狼になるしかない」、ボーダーラインの「悪を滅ぼすには悪になるしかない」のような、善悪のつきようがない不条理さが浮き出てくる。その現場へやってきた主人公マヤが戸惑うシーンが最初のトリガーとなる。そこから紆余屈折あって彼女がだんだんと執念に駆られていく。気づけば抜けられない底なし沼へと足を踏み入れている。

彼女はアメリカそのものなのか?

今現在、アメリカは彼女同様、復讐の連鎖、執念の底なし沼から抜けられない状態が続いている。ラストシーン、彼女は敵の大将を倒したところで何を得られたのか、まるで実感がなかったように見える。むしろ、悲しさが溢れてきていた。
彼女が追い求めたものとは?
この映画ではハッキリとビンラディンの顔を見せることもなく、本当にビンラディンであったのかが分からない(実際別人だという説も)。ビンラディンを殺せば平和になるのか?本当の平和はどこへ?本当のビンラディンはどこへ?
わたしには「平和」と「ビンラディン」が重なり合っているようにみえた。どちらも手を出そうにも実態が見えない。

最後のパイロットが言う「どこへ行く?」というセリフ。
それは、アメリカの行方を聞いているようだった。


「女神の見えざる手」同様、カッコいい女神様ジェシカチャスティンが最高。こんな女性に引っ張られたい。
兵士役が異常に豪華。最初はスコットアドキンス。そのあとはエドガーラミレス。そしてシールズ隊員はジョエルエドガートン、ナッシュエドガートン(ジョエルの兄)、クリプラ、カランマーヴェイ、そしてフランクグリロ!!!フランクおじさん声が独特だから顔出てなくてもすぐ分かっちゃったよ!!
毛が生えたマークストロングも最高の演技!
Masato

Masato