FREDDY

草原の椅子のFREDDYのネタバレレビュー・内容・結末

草原の椅子(2013年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

芥川賞作家の宮本輝が、阪神・淡路大震災で被災したことをきっかけに、シルクロード6700キロ、40日間に及ぶ旅を経て執筆した同名小説を映画化した本作。まずは遠間憲太郎を演じた佐藤浩市とその娘、遠間弥生を演じた黒木華の安定感のある演技は言うまでもなく、富樫重蔵を演じた西村雅彦や喜多川秋春を演じた中村靖日、篠原貴志子を演じた吉瀬美智子などといったキャスト陣もとても魅力的でしたし、中でもとくに印象的だったのはやはり、喜多川祐未を演じた小池栄子ですね。彼女の怪演は目に残るどころかしばらくの間、目に焼き付き忘れられませんでしたし、妙な威圧感に圧倒されるばかりで、ただただ"すごい"の一言。喜多川祐未の実の息子である、貞光奏風が演じる喜多川圭輔が"母親の虐待によって心に傷を負い口を閉ざしてしまった"ことに説得力が生まれ、物語にすんなりと入り込めましたし、それと同時に"虐待"について深く考えさせられました。そして、劇中の台詞もまた心を打つものが多々あり、個人的には観る価値は大いにありましたし、本作の主題歌である「真昼の月の静けさに」の歌詞が憲太郎から圭輔に贈った言葉のようで、最後まで心を揺さぶられました。ただ、どうしても気になってしまうのは、「最後の桃源郷」と呼ばれるパキスタンのフンザを訪れ、それぞれが"自分の未来"の道筋を定めて歩き出す決意をするのだが、人生の転機を与える重要な場所であるフンザがあまり魅力的とは思えず、せっかくのドラマが少々淡泊に感じてしまいました。それでも本作はとても面白い作品でしたし、好きな映画であることに間違いはないですね。
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