K

アンチクライストのKのレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
2.5
ラース・フォン・トリアーが監督・脚本を務める、「鬱三部作」の一作目。ニンフォマニアックは鬱とはまた違った気がしたけれど。

アンチキリスト=サタン→悪であるという女性の本質という伏線。ミソジニー。
エデン、自然、そこは悪魔の教会。そこを支配するアダム(夫)と支配されるイブ(妻)。

カトリックでは、全能の神がアダムを創造したときに、神の姿と同じに造ったことになっている。アダムは男だから、神は当然男になるというのがカトリックの考え方で、イヴはアダムのあばら骨から生まれたので、女性は、男のあばら骨程度のもの、と言うなのが教会の根本思想。そのイヴがアダムを唆して禁断の実を食べさせたために、女性は信用できない罪深い存在。
キリスト教では、人間のあらゆる欲望は、アダムが禁断の実を食べた(原罪)時から始まるため、神を信仰する上で一番大事なことは禁欲であり、禁欲する事によって神に近づくことができるのです。しかし、女性は、男性が禁欲しようとするのに対して、いつもそれを阻止しようとするものと考えられてきた。これが女性の本質的な悪。

ただ、この物事を二面性でしか捉えない見方が、極端な差別を生み出しているわけで、善か悪かというだけの見方は所詮、妄想的である、という解釈が女性=悪とした、魔女裁判に固執する妻に夫が諭すシーンで解釈される。

結局、自らのミソジニーに罪の意識を持ち、嘆き、痛み、絶望して自滅したのは妻であって、夫も、彼女を支配(治療)することはできなかったし、キリスト教的権力の構図が機能しないまま終焉するこの映画自体が、antichrist。
K

K