B姐さん

アンチクライストのB姐さんのレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
-
ラース・フォン・トリアーの鬱三部作(2009年本作、2011年『メランコリア』、2014年『ニンフォマニアック』)と言われるものを順に観て行くと、監督の興味というか関心というか自己探求というか、そういうものの変遷がわかって面白い。本作は鬱克服セラピー映画第一弾として製作されている(たぶん)。

本作は「セックスを捨てようとする女」の話で、『ニンフォマニアック』は「セックスに取り憑かれた女」の話。
根底には、快楽を目的にしたセックスは罰を受ける(受けるべき)もので、反キリスト的(アンチクライスト)なものだ、そうしたもの(性欲とか肉欲とか)から解放されて(否定して)初めて楽園に行けるのだ、といったものがある(たぶん)。だから『ニンフォマニアック』が作られたのは必然のような気がする。本作とほとんどコインの裏表のようだ。『ニンフォマニアック』に興味があれば、観て刺激を受けた人がいれば、監督の鬱世界に浸りたい方には本作を観ることをお薦めしたい。そうでない人には別にお薦めしないが。

C・ゲンズブールの演技はとても鬼気迫るものがあってもの凄く、あの少女性の塊だった“なまいきシャルロット”がラース・フォン・トリアーの手により、ラジカルなセルジュ父さんと奔放なジェーン母さんの娘ということを再認識させられた。
なんか嬉しいやら悲しいやらである。

個人的にはラース・フォン・トリアーの映画にケリをつけられたと満足してるし、やっと解放されて「エデン(楽園)」にいる気分だ。

DVD(12/7/2014)
B姐さん

B姐さん