えいこ

風立ちぬのえいこのネタバレレビュー・内容・結末

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

公開時に観た時とはまた違った感慨。当時は、青年の純粋な夢と、限られた命を削るような少女の恋を見ていた。

時代が進んだからかしら、今回感じたのは男のエゴイズムと女の献身。もちろん、二人が心から惹かれあっているのは素敵だし、仕事の完成度を追い求める二郎の姿勢も素晴らしい。ただ、菜穂子が二郎のもとに命懸けで辿り着くのは、きっと熱情だけではない。離れている病気の自分が、仕事に全力を注ぐことを妨げている、一緒に居れば、二郎は安心して仕事に没入できるという冷静な気持ち。昭和妻の遺伝子が私にもわずかに残っているので、仕事に夢中な男の人を支えたり傍で見ていたいという気持ちはわかる。でも、たぶんこれは男目線の描き方。エリートであれば、時代の要請で戦争を押し進める側に立つのは必然。求められている最高を目指すのも当然。でも、すべてが終わった残骸の山を眼下に見ているところで、菜穂子からの「生きて」って。雲の上の人すぎる。

あくまで純粋さや美しさに特化して描いた作品。特に夏空と雲の健やかさ、夕焼けの空の切なさ、不穏な雲や雨、心情を表現する空の描き方はジブリ随一。最後の「ひこうき雲」がまた沁みる。
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