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かぐや姫の物語のmuscleのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
5.0

本編よりも下手したら面白いドキュメンタリー『高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。ジブリ第7スタジオ、933日の伝説』が凄かった。ジブリドキュメンタリーって浦谷プロデューサーのもはや神話化した『「もののけ姫」はこうして生まれた』とか教育的な作品を目指す方針かと思ったら、今作は編集の妙でユーモアを見せることに徹する作り。当然ながら坂本龍一のくだりや、初音ミクのくだりは描かれず。作画スタッフとの絡みも1秒たりとも映されない。では何が映されるのかといえば、寝転がる高畑勲、試写室でヤバい姿勢でラフカットを見る高畑勲、自転車を漕いで散歩する高畑勲。「抱いて!」のとこであまりにも高畑勲らしくないと思ったら「77年、はじめてのラブシーンです」みたいなことがコンテに書いてあってグッとくる。「エラン・ヴィタール!」なんて描きつねるのも死後を悟ったから? 二階堂和美聴きながら、もうちょっと浸らせてくれよぉなんて言ったりする高畑勲の老いが寂しい。
脚本段階で出来上がっていて、脚本→プレスコ→絵コンテ→作画→追加録音→音楽の順。
プレスコなので、音ありきの表情になっているのが実感できる。つまりそれはどういうことかというと、キャラクターたちが声優全員に似ている。寄せてる?
怒った顔が車輪になったり、その辺りの繋ぎはコンテ段階でのことだろうか。
ラストで「行かないでぇ」と泣き顔のアップを入れて欲しいという西村義明プロデューサーに対して、完璧に跳ね除ける高畑勲。逆に高畑勲レベルでもプロデューサーにその要望され、しかもそれが長年連れ添ったプロデューサー当の口から…というのにビビる。宮崎駿が千と千尋のエレベーターで老いを感じさせたって有名な話があるけれど、高畑勲はいい意味で演出の飛躍が加速している。制約まみれだったホルスから、どんどん自由に軽やかに。
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