マーくんパパ

ヒッチコックのマーくんパパのレビュー・感想・評価

ヒッチコック(2012年製作の映画)
3.9
ヒッチコック稀代の傑作『サイコ』の制作舞台裏を夫婦の私生活含め虚実混じえて描かれる。1959 年MGMでスマートサスペンス『北北西に進路を取れ』を撮りヒットさせる。パラマウント社はヒッチコックとの最後の契約1本に期待するがよりによってヒッチコックの希望は猟奇的殺人の『サイコ』の映画化で周囲は大反対となる幕開け。出資の目処も立たずヒッチは自宅を担保に自ら用立てパラマウントは配給だけ参加する事で合意に至るが、今度は残虐性と裸、トイレシーンで検閲がパスしない。苛立ち募らせるヒッチに追い討ちかけるように妻アルマと協同脚本家との不倫疑惑も出て来る…。疑心湧いた裸の王様ヒッチの心の闇をサスペンスペーストで固め『サイコ』制作の過程を見せていく所がミソ。A・ホプキンスの成り切りヒッチも勿論見ものだがJ ・リー、A・ホプキンス、V・マイルズら『サイコ』出演者たちの替え玉役者たち其々も雰囲気似てるのに嬉しくニヤけてくる。トリュフォーとの対談『ヒッチコック映画術』で撮影中に病気で倒れその間の撮影は現場に任せていたことや製作費80万ドルを1300万ドルにして回収したことが語られている。試写で酷評された後、仲直りした妻協力のもと編集し直し迫真のシャワーシーンモンタージュでヒットに繋げる(この部分は多分虚飾)。アカデミー賞など縁のない作品系列、ヒッチ自身がテーマや物語の内容よりとにかく映像に拘り続けた深淵も見えて出来映えはとやかく言わずにヒッチファンには充分に楽しめる作品でした。