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建築学概論のhorryのレビュー・感想・評価

建築学概論(2012年製作の映画)
3.5
2つの家(スンミンの地元の空き家/済州島のソヨンの家)と二人の人生と時間を重ねた作品だと思った。
授業で先生が「自分の住んでいる所に愛情を持ち理解する、それが建築学概論の始まりだ」と言うのだけど、二人とも地域に愛情はない。スンミンはプロの建築士だけど、ソヨンの「家を設計してほしい」という希望に対し、最初に提示したのが、おしゃれだけど空疎なデザインばかりだった。このことが示しているのは、スンミンには何かが欠けているということだろう。

大学生の頃のスンミンは、自分に自信がなく、うまくいかないことばかりだし、希望を持つこともできない。スンミンの地元の空き家は、美しいのに荒れていて、スンミンそのもののようだ。空き家に勝手に入ったソヨンが家を整え、二人で時間を過ごすようになること=恋愛はすでにそこにあったのに、誤解からソヨンと別れてしまったので、スンミンの心は空き家のままだったのだと思う。

一方のソヨンも、チェジュからソウルに来たということや、「ピアノ教室出身」では将来がないと、アナウンサーというとっぴな夢に逃げる(アナウンサーになるための努力は語られない)。スンミンの地元にも愛着を持てず、結婚して住んでいる場所からも離れようとしている彼女は、荒れたチェジュの家をスンミンの力を借りて建て直す。
ソヨンもスンミンとの別れで埋められない心の傷があったのだけど、スンミンと違ってソヨンはそのことに自覚的だった(だからスンミンの作った模型を持っていた)。自覚があるからこそ、スンミンの存在によって家を建て直す=人生をやり直したかったのだろう。

出会った時に二人は空き家を整えて居場所を作ったけれど、掛け違ってしまった二人の人生は別々になるしかなかった。
けれど、ソヨンは再びピアノに向き合えるようになり、過去を取り込んだ美しい家で人生を歩める。
スンミンの未来については作品では触れられていなかったけれど(CDがソヨンに届いたが)、家を建てることでソヨンを救ったのだから、建築士としても、元恋人としても大きな仕事をしたんだと思う。

若い時を演じたイ・ジェフンとスジがかわいかったし、なにより、ナプトゥクを演じたチョ・ジョンソクがとても良かった。
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