マクガフィン

そして父になるのマクガフィンのレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
4.0
子どもの取り違えという出来事に遭遇した2組の家族を通して、愛や絆、家族といったテーマを描く物語。

エリート的夫婦と庶民的夫婦の対照的な環境に馴染んで育ったそれぞれの子供。親子の絆は血縁か、これまで過ごしてきた時間という葛藤の中で、それぞれの家族が苦悩するのだが、日常生活の出来事や何気ないシーンを丁寧に積み重ねることで、モキュメンタリーな展開に心の機敏に情景を盛り込む表現方法で作品に情緒的な味わいを添えていることが素晴らしく、心を揺り動かされ続ける。

主演(福山雅治)の挫折を知らずに生活してきたエリート意識にとらわれた男を熱演し、意識なく出るなにげない冷徹や見下し感の嫌みな所を実に嫌味なく演じているハマリ役で、無機質の高級デザイナーズマンションで生活する情景も味をだし説得力を加える。

福山の今まで解決してきたこれまでの問題と異なる、自己常識の枠外に放り出されて激しく葛藤する視点が印象深く、真剣に自己対峙し、うろたえながらも徐々に父親としての責任と愛に目覚めていく姿をもがきながら体現していく模様が秀逸。

作品通じて親子とは何かの問いかけは、育児交換・育児継続・2人を育児などの選択問題提示ではなく、心の移ろいや秘めていた感情を丁寧に拾いあげていき真実や正しさや信じられるものを導き出し、それを熟考する誠実な映画で、断定的結論を押しつけないことで思考を促される手法は是枝監督ならでは。

・2013年 邦画 作品:第1位