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クロニクルのnowstickのレビュー・感想・評価

クロニクル(2012年製作の映画)
3.9
超能力物の映画と、ファウンドフッテージ物の映画を見たかったところ、本作が丁度良かった為、鑑賞。

ファウンドフッテージ物を初めて見たのだが、「ビデオカメラを購入したから、これから全てのことを記録する」と主人公がカメラに向かって喋る、物語の導入部分のシーンで、とても引き込まれてしまった。
モキュメンタリーやファウンドフッテージ以外の映画は、全て「神の視点からの映像を観客が見ている」と、解釈されるべきだろう。しかし本作のような、「作品世界に存在するカメラの映像」という体の映像のみで構成されている映画では、「その映像は誰の何の視点の映像なのか?」という問いに対して、明確に答えがある。
文学の歴史においても、最初期の頃は韻文による叙事詩といった神話から始まったが、活版印刷により記録媒体の面積が増えると、偽の手記という体を取った小説というジャンルが産まれた。「ロビンソンクルーソー」「トリストラムシャンディ」「シャーロックホームズ」といった小説は、作品内の架空の人物が書いた手記という体を取っている。
それ以前の映画が神話なら、モキュメンタリーやファウンドフッテージものは小説と言っても良いだろう。

カメラワークにおいても、ファウンドフッテージものならではの面白さがあった。
主人公が超能力を持ったことで、カメラを浮かしてドローンみたいにして撮影するシーンは、素晴らしいアイデアだと思う。
また、後半のアクションシーンにおいて、超能力によって車を持ち上げられるシーンがあったが、もし本作が普通のアクション映画だったら、車の外から俯瞰で撮った映像により表現されるだろう。しかしそのシーンにおいて、本作では、車に乗っている登場人物のカメラから撮ったカットが使われていた。個人的には、USJに昔あったスパイダーマンザライドみたいに、持ち上げられてる作品内の車に自分が乗っているような感覚になり、面白かった。
あとは、「いや、流石にこんな所は主人公もカメラ回さないだろう」と思うような、都合の良いシーンもあったが、まあ、許容範囲だろう。

映像技術の進歩や、インターネットによるメディアの面積の増加から、ファウンドフッテージものは今後も進歩し続けるのだろう。個人的には本作を見たことで、ファウンドフッテージものや、モキュメンタリー作品を重点的に見ていこうと思えた。
本作は、正直中盤においては退屈な時間も少しあったが、冒頭のアイデアと、後半のアクションシーン等のカメラワークを見るためだけでも、十分に意味のある映画だと思う。
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