白石和彌監督の初期作にして、一番好きな作品。「死刑にいたる病」より数倍怖いし面白いです。
まず、ピエール瀧×リリーフランキー×山田孝之という、クセ強俳優3人の化学反応が素晴らしい。彼らが作り出すあまりに凶悪な世界観。それは映画で味合うのはいいけど、現実では絶対ご勘弁。
まず、ピエール瀧。
彼が山田孝之を恫喝シーンがあまりに恐くて、リアルに背筋が固まるほど。なんか顔面とか体格とか醸し出す雰囲気とかがガチなんだよね。薬打つシーンとかもやけにリアルだったから、捕まった時は「あぁ、そうゆうことね」と驚きというより納得が勝ちましたね。
リリーフランキーの演技もヤバい。先生って呼ばれるのにピッタリな風体だし、陰湿でいや〜な奴を見事に体現している。
しかも、リリーフランキーはこの時、是枝監督の「そして、父になる」と並行しての撮影だったらしいから驚き。本人も変な感じだったとは言っていたけど、一体どんな精神状態で撮っていたんだろうと思う。どちらの作品も素晴らしい演技を魅せているだけに、リリーフランキーの役作りとか人間性に興味が湧いてしまう。
そして、山田孝之も良かった。派手なキャラが得意なイメージだけど、こういった抑えた演技も上手いんだよな〜。
今作はとにかくみんな悪人になりきっていて、ヤバい奴らの演技合戦って感じで、見応えがあります。
実話がベースだからか生々しくてかなり胸糞なシーンも多いんだけど、淡々とそんな出来事を描いていく感じ、個人的には大好物です。
構成も少し捻ってあって、オープニングでいきなりピエール瀧は捕まるので、どんな風に彼が堕ちて捕まるに至るのか、その逆算的なストーリー展開も良かったです。
好きなシーン(倫理的に好きなシーンと言うには憚れるが)は、おじいちゃんにアルコール度数の高い酒を飲ませて殺そうとするシーン。
同じ人間だとは思えない所業。
同じ人間だからこそ分かる気持ち。
初見時は、心がグチャグチャになりましたね。今まで観てきた映画でもトップクラスに胸糞なシーンでした。
今作は、そんなシーンが程度は違えど割とあるわけで、見る人を確実に選ぶ作品ではあるが、凶悪的な演技が見れる作品としては一見の価値があるかと。
あとは、人間の持つ「悪」について考えさせられる。
人間って本質的に「悪」を飼っていて、それが暴れるか暴れないかは、その人の性質や環境次第なのかな、と。
だから、自分の「悪」が暴走し、「悪」に染まり、いつの間にか「凶悪」になってしまっている、そんなこともあるんだろうな。
ラストは、画面外で安心安全な領域で映画を楽しんでいる自分自身も、「凶悪」なんだとハッとさせられました。