kohei

凶悪のkoheiのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
3.5
大義のためだとかこつけて
臭い物には蓋をする

この映画なかなかに卑劣。冒頭から殺人のオンパレードで、その殺し方はバリエーションに富み、それが全てだと思いきや次々と明らかになる蛮行の数々。しかしこれらの殺人シーンは凶悪犯の奇行やエンタメ要素が盛りだくさんで「面白い」と感じずにはいられない。ときに、そういった「目に見える分かりやすい悪」に惹きつけられていると、その裏で肥大化していくもう1つの悪の存在に驚くことになります。この映画で本当に怖いのは「凶悪」を暴こうとする得体の知れない怪物の存在。彼がなぜあの様になってしまったのか、その点が明確ではないので一段と怖さが増してくるのです。

リリフラでもピエ瀧でもなく、完全に山田孝之の映画でした。冒頭から彼の行動には不明な点が多く感情移入を許さない人物像には気持ち悪さを感じていたけれど、物語が進めば進むほど彼は暴走していきいっそう彼の心を捉えることができなくなる。彼が穴を掘れば掘るほどその穴にはまっていくのと同じくして、私たちも彼の抱える闇の深さに唖然としてしまいます。

血肉の向こうに見えたランドセルの姿が、山田孝之の向こうに見えるもう1人の山田孝之を見せ、最終的に雑誌と映画の向こう側にいる私たちにそれは巡ってくる。ラストカットで感じた、爽快感と底知れない恐怖感の共存した気持ち悪い感情が頭にこびりついて離れません。しかし面白かったなぁ。
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