d3

失楽園のd3のレビュー・感想・評価

失楽園(1997年製作の映画)
3.7
日経新聞に連載され、内容がゆえに当時は社会現象にまでなった渡辺淳一作品を原作にしている。
社会現象になったがため、いまだに多くの映画ファンは、この作品についてフィルターがかかっているようにも感じていた。数十年ぶりに見返して驚いたのは、序盤から家族をはじめ、周囲に不倫がバレていることだ。
どう落とし前を付けるのか、パートナーから求められる。つまり物語自体は不倫の甘い幻想を描きながらも、行為自体を肯定するものではなかったという発見があった。制作スタッフも「(妻役の)星野知子がええやんか。なんなんや、この男は」と言いながら制作していたらしい。
当事者たちの「愛せなくなった相手と無理に一緒にいると相手を傷付けて裏切ることになる」と、ガンで死にゆく同僚が残した「どうせ人間老いぼれて死ぬんだから、やりたいことをやっておかないといかん」という後悔と悟りが入り混じった欲望は、同じベクトルのようでいて違った印象を受ける。
改めて感じたのは、不倫を題材にして2時間で描ききることの難しさだ。どうしても主張の一部だけを切り出した形になってしまう。殺人を題材にした物語では共感性を求められないのに、不倫のそれに正義感を持ち出すのは妙にリアルに感じてしまうからだろうか。
役所広司と黒木瞳の実年齢差は数歳なのに、50歳と38歳の不倫カップルとして成立しているのは見事だった。
d3

d3