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ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイのSariのレビュー・感想・評価

3.7
世界一美しいと言われる曲線を持つ“イームズ・チェア”を生み出し、工業デザインに大きな影響を与えた、チャールズ・イームズと妻のレイ・イームズ。デザイナーとしての業績だけでなく、生前明かされることのなかった彼らの、夫婦としての絆に焦点を当てたドキュメンタリー。

既婚者だった建築家チャールズ・イームズが、画家志望のレイ・ガイザーと出会う。二人は恋に落ち結婚、イームズ・オフィスを立ち上げる馴れ初め。チャールズの息子、孫、かつての愛人、現代のイームズのデザイナーや、脚本家・映画監督ポール・シュレイダーもインタビューに登場している。

第二次世界大戦。アメリカの急速な近代化、冷戦と時代に翻弄されながらも、20世紀半ばデザインの潮流となったミッドセンチュリー・モダン。イームズ夫妻が手がけた仕事は家具デザインだけにとどまらない。
広告、写真、映画(最も有名な映画作品は『パワーズ・オブ・テン(10のべき乗)』を制作し、玩具やゲームをデザインし(ハウズ・オブ・カード)、さらにマルチメディア作品(1964-65年のニューヨーク万博におけるIBMパビリオン)も手がけた。劇中では、ロサンゼルスの見晴らしが良い草原に建てられた、夫妻の自宅兼アトリエである見事なモダン建築が見られる。

また、デザインに留まらず女性の社会的地位やコンピュータなど、現代的な問題意識に溢れた映画である。
人前では、夫チャールズの影に隠れていたレイ・イームズ。デザインの色彩感覚に優れていた妻レイに、チャールズが何かと頼ることも多く、常に夫婦二人三脚で仕事を進めてきた。そのように、実はレイが大きな役割を果たしていたということから、アメリカの戦後史における女性の立場の変遷を描き、その問題点、そして現代からの再評価、現代的な意味を掘り下げている印象であった。

ちなみに今、名古屋高島屋の10階で開催している『椅子とめぐる20世紀のデザイン展』を鑑賞した。ここでミッドセンチュリー時代におけるイームズの代表作が展示されている。この映画の劇中でも紹介されている、第二次世界大戦中に初めてイームズ夫妻が手がけた、戦時中に足を骨折した兵士のギプスの代わりとなる役目を果たした‘添え木’の実物が展示されている。また、展示の最終で幾つかの名品に試し座りができるコーナーで、ラウンジチェア+オットマンに座り至福のひと時を過ごした。
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