Sari

楽園からの旅人のSariのレビュー・感想・評価

楽園からの旅人(2011年製作の映画)
3.4
イタリアの名匠エルマンノ・オルミ監督作。

イタリアのある教会を舞台に、真の救済とは何か、それは21世紀の現在も可能なのかを真摯に問う。

取り壊されようとしている教会。
老司祭(マイケル・ロンズデール)は長年、ここで神の教えを語ってきたが、今は誰からも必要とされていなかった。彼一人が残る教会に、ある晩、身を隠すようにして何人かの人々が訪れ、ダンボールで即席の家を作り、休息をとった。多くがアフリカからの不法移民だ。翌朝、目覚めた司祭は驚くが、彼らを守ることこそが自らの使命と直感する。不法移民の中には、暴力でしか世界は変えられないと説く者もいて、警察の捜査の手もせまるが…。

まるで舞台劇のような、荘厳な展開である。フェリーニを想起する、吊るされたキリスト像、天井のステンドグラスと雨漏り、SFのような光を浴びた扉の向こうの世界、そして司祭や黒人たちの顔…照明撮影は美しい。

予算が少ないのだろうが、場面は教会の聖堂と司祭室、いくつかの部屋だけであり、夜の出来事で色も暗く抑えてあり、言葉数も少ない。初っ端から無駄な装飾を取り除くことによりソリッドな演出を見せたかったのだろうが、ややイメージが限定され過ぎてるように感じる。
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