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ビフォア・ミッドナイトのxyuchanxのレビュー・感想・評価

ビフォア・ミッドナイト(2013年製作の映画)
4.4
少しだけ追記を入れて書き直しました。
コメントくれてた方ごめんなさい。
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1995年「Before Sunrise」
2004年「Before Sunset」
2013年「Before Midnight」

劇中の設定と公開年が同じ9年ごと。僕にとっては一緒に歳をとってきた3部作。離婚と再婚もふくめ、この3作目はリアル過ぎる。

このシリーズはリンクレイター監督が1989年にフィラデルフィアで出会い夜通し語り合った女性との思い出をベースに作られたとのことで、2作目のジェシーがそうだったように、監督は作品を公開することでずっとどこかで再会を期して居たらしい。3作目の公開後にわかったことには、その女性は1作目のBefore Sunrise撮影開始直前にバイクで事故死していたと。

1作目の出会いから18年。空港で元嫁のもとに暮らす息子を送りだし、セリーヌと双子の娘ニナとエラが待つ車に乗り込むジェシー。これが2作目での選択の結果。でも車中の会話からは過去2作からは一転し、現実的なしがらみに翻弄されている2人の"いま"が映し出される。

(双子の娘は、ニナ・シモンとエラ・フィッツジェラルドから名前とってるに違いない😁)

人は歳をとると頑固に、我儘になるって言うけれど、それぞれの人生において大事な人やこだわりが明確になるって事でもある。 独りで生きていける大人にとって、他人と一緒に暮らす事は思い通りにならない原因を増やすこと。しがらみを増やすこと。

それでも一緒にいたい誰かなのか、ということ。

"この相手は自分の人生において欠かせないこだわりなのか"

この問いを突きつけられる。

非常に逆説的だけど、この2人は一度お互いを失ったことによって、お互いが居ない人生を他の誰かと暮らしてみたことによって、お互いの存在を確かめ合えてる。他の誰かにとっては残酷な話なんだけど、こればかりはどうしようもない。そこまでの相手じゃないのに、性欲や甘えや逃げで他の誰かに走るのとは違う。そして一生ものの相手に出会えたとして、再会できるとも限らないし、お互いにそうだと気づけるとも限らない。

セリーヌのように美人で理想家だとなおさら、老いやしがらみは不安で居心地が悪いもの。子育てとお互いの仕事のせめぎあいのストレスとイライラ、ひょっとすると更年期の影響もあるかもしれないけど、まるで自分の苦しみを解ってくれていないようにみえるパートナーにぶつけてしまう。

それでも、何が起きようとも、ジェシーにとって彼女は"完璧ではないが本物"なのだ。ラスト、海辺のレストランでのシーンは”包容力”なんかじゃなくて、演歌で言うところの”惚れた弱み”だからね。1作目でジュリーがセリーヌに一緒に電車を降りようと説得するシーンが伏線となってる。

2人はまた時間を越えた。

で、セリーヌにとっても"本物"なんだよねぇ?🤔

さてイーサン・ホークは「Before Sunrise」は”可能性/what might be”、「Before Sunset」は”選択/what could be”、「Before Midnight」は”現実/what is”を描いたと語ってるとのこと。もし次作があるとすると2022年で50歳、タイトルは「Before Dawn」とかかな?"現実"を越えていく先は?

9年後ってことは・・・ジュリーの息子ハンクが20代前半、双子の娘は6~7歳だったから高校生くらい? まだまだ悩ましい頃だよなぁ。見たいような見たくないような…笑


歳を重ねるとなおさら、誰とでもじゃなく、一緒に居たいと思える相手とだけ過ごしたい。時間はどんどん貴重になるから。


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