七沖

パシフィック・リムの七沖のレビュー・感想・評価

パシフィック・リム(2013年製作の映画)
4.2
〝人類よ、立ち上がれ。この巨兵と共に〟
日本の特撮へのリスペクトに溢れた作品。

太平洋の海底の裂け目から怪獣が出現し、人類は対抗するためにイェーガーという巨大人型兵器を開発する。だがイェーガーでも勝てないほど強い怪獣が現れ始め、各国首脳陣はイェーガー計画の中止と、都市を守る巨大防壁の建造に着手する。戦いで兄を失った過去を持つイェーガー乗りのローリーは、ある日イェーガー計画の責任者だったスタッカーに海底の裂け目を塞ぐ作戦に誘われる。作戦基地でローリーが目にしたのは、かつて兄と共に乗っていたイェーガーの修理された姿で…というストーリー。

漁船が危機に陥る冒頭からして特撮愛が炸裂!古くは『ゴジラ』『サンダ対ガイラ』、平成に入ってからも『ガメラ 大怪獣空中決戦』『シン・ゴジラ』など、洋上の船のシーンは怪獣映画の導入として定番だ。いつものお約束みたいなもので、なんか地元に帰ってきたような安心感すらある。

そして何より良かった点が、イェーガーをヘリで吊るして移動する、というところ。ゴモラや機龍など懸吊されて移動する映像を見慣れているせいか、馴染みの風景が見れたことが嬉しかった。
イェーガー自らがバックパックとかを噴射して自力飛行するのもアリといえばアリなのだが、あえてそうせずヘリに任せる設定にしたのは、きっと狙っていると思う。この設定により、イェーガーはスーパーロボットではなくリアルロボットだということが良く分かる。

惜しい点は、怪獣にあまり魅力がなかったことだ。酸を吐く奴、電磁波を放つ奴などバリエーションはあるのだが、戦いが夜や海底など暗いシーンばかりで観づらく、魅力が伝わってこなかった。
これはギャレス版『GODZILLA』でも感じたことだが、薄暗いシーンが多いせいで戦いの全体像を把握しづらく、盛り上がりの妨げになっているように思う。
その反面、夜とはいえライトアップされた香港での戦いは本作一番の見どころになっていた。コンテナで殴ったりタンカーを剣に見立てたりと、即興の武器で戦うのがウルトラマンっぽい。

この作品は字幕だけではなく吹き替えも面白い。声優・杉田智和の「ロケットパンチ!」「ロケットパンチ起動(電子音声)」の流れは熱くなる。
そしてこれは本当にどうでもいい話だが、怪獣博士の二人を見ると、なぜか毎回爆笑問題を思い出す。日本でリメイクすることがあればぜひ出演してほしい。

特撮のお約束をふんだんに取り入れつつも、オタクしか楽しめないような敷居の高さは無く、誰もが観れるエンタメ作品だ。
次回作は監督が違うのでどうなるか不安もあるが、楽しみに待とうと思う。
七沖

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