ちょげみ

オブリビオンのちょげみのレビュー・感想・評価

オブリビオン(2013年製作の映画)
3.7
【あらすじ】
異星人スカヴに地球が襲撃されてから半世紀が過ぎた。
なんとかスカヴとの戦いには勝利したものの、地球は半壊状態になり、人類は他の惑星への移住を余儀なくされていた。
ジャックとヴィクトリアは未だ根強く抵抗してるスラヴから惑星移住のエネルギーを生み出すエネルギー発電装置プラントを守る為、今日も黙々と警備の任務に就く。


【感想】
異星人との戦い、核戦争後の殺伐とした世界、消された記憶など、SF要素をこれでもかという程詰め込んだザ・SF作品です。

ストーリーは澱みなく進んでいき、他のキャラクターとの交流や衝突もあまり多くないためやや起伏が少ないといえなくもありませんが、それはこの作品を通して伝えたい事を効果的に表現するためだと思います。
この作品で問うているのは"アイデンティティの確立の仕方"。

"自分"が無数に存在する世界において、自分という人間の価値、独自性、意味というのをどこに求めたらいいのか、というのを登場人物を極限まで削ぎ落としたミニマムな物語の中で描き切っていました。


作品のメッセージ性も魅力的ではあったのですが、今作品において際立っているのはやはり映像表現。

ジャックとヴィクトリアが住む雲の上に存在している住居の無機質で洗練されたデザイン、家から見下ろす壮大で心が洗われる雲海、破壊された月と幻想的で息を呑むほど美しい星空が織りなす魅惑的な風景。

生き物の気配をまったく感じさせない荒廃した地球の、星の揺籃期を想起される情景、そして何より近未来感あふれるドローンや飛行物体のメカデザイン。。。

これらの要素が渾然一体になって、極上の視覚的快楽を提供していました。

人類対宇宙人の、存亡をかけた血で血を洗う大戦を描いた超大作というわけではなく、どちらかというと物語は淡々と進行していきますが、悠久の大河の流れを感じさせるような、静かだけど確かな強かさを備えた作品です。
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