Omizu

リアリティーのOmizuのレビュー・感想・評価

リアリティー(2012年製作の映画)
4.7
【第65回カンヌ映画祭 グランプリ】
『ゴモラ』マッテオ・ガローネ監督作品。カンヌ映画祭コンペに出品され、グランプリを受賞、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では撮影賞など3部門で受賞した。

大好き。やっぱガローネといえばこれでしょ。容赦ない痛々しい主人公の心理描写、計算し尽くされた色彩コーディネート、人間の深いところまで降りていくストーリーテリング。全てがこの映画にある。

『僕はキャプテン』は気に入らなかったが、ヴィジュアルという面では変わらないものが見出せた。結末が不満であったが。

リアリティー番組に選ばれたくてしようがない男はあまりにのめり込むあまりに妄想に囚われていく。

少しずつ狂っていく主人公を描かせたら右に出るものはいないのではないか。『ドッグマン』に連なる不気味で狂気的な終盤が素晴らしい。

ラストカットにはお見事!と拍手しそうになった。暗い街にそこだけ明々と照らされたリアリティー番組のセット。彼は無断に侵入、不気味な笑い声をあげる。そしてカメラは遠景ショットへ。彼の狂気だけが明々と光っているようだ。

ハイテンションで進められていくストーリーテリング、彼の妄想シーン、全てが忘れられない痛々しさを伴っている。

彼にとっての「リアリティー」が暴走していく様を雪だるま式にみせていく、これこそがガローネ!素晴らしい。日本公開されずビデオスルーというのが信じられないほど完成度の高い作品。やっぱりガローネはイタリアで一番好きな作家だ。『僕はキャプテン』はのれなかったが、新作が出たら真っ先に観賞したい。
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