爆裂BOX

シタデルの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

シタデル(2012年製作の映画)
3.2
荒れ果てた郊外の街に住むトミーとジョアンの夫婦。ある日、妊娠中のジョアンはトミーの目前で謎の集団に襲われ、昏睡状態に。赤ん坊は無事に生まれエルサと名付けられるが、トミーは精神のバランスを崩し広場恐怖症になっていた…というストーリー。
「ダンケルク」にも出ていたアナイリン・バーナード主演のサスペンスホラーです。キアラン・フォイ監督自身が強盗に襲われて広場恐怖症になった経験を基に製作したそうですね。
広場恐怖症になってロクに外出が出来なくなったトミーですが、ジョアンの葬儀で出会った神父からジョアンを襲った謎の集団がエルサを狙っていると聞かされ、襲撃を受けて神父と盲目の少年ダニ―と共に謎の集団がいるビルに向うという内容です。
基本的に静かな作品で、派手でグロい描写はありませんね。冒頭、トミーがエレベーターに閉じ込められている間に目前でフードを被った子供達にジョアンが襲われるシーンはリアルに怖い感じがありましたが。
それよりも、広場恐怖症を抱えながら一人でエルサを育てていかなければならないトミーの苦難の日々が中心に描かれます。外に出ようとすると汗ダラダラかいて顔面蒼白になって怯えだすトミーの姿は、演じるアナイリン・バーナードの熱演もあって真に迫ってますね。本当に病んでる感じと怯えてる感じの演技が素晴らしく、トミーの状況の悲惨さが伝わってきました。セミナーでのカウンセリングで歩いてる時の姿勢などが「襲われる者」の格好で襲撃者は目ざとくそれに目をつけるという説明には「成程!」と思いましたけど本当なのかな?ここも監督の経験基にしてるのかな?
襲撃者であるフード付きの服を被った子供達はノロノロ歩いてきていきなり殴りつけたりする所が、日常の中で突発的に死に迫る暴力をふるう者のリアルな怖さ感じました。トミーが逃げ込んだバスに乗り込んで運転手や他の乗客殺す所とか。終盤見れるフードから見える顔もミイラみたいな化け物顔でしたな。しかしヨハネス・ロバーツの「F」やアタック・ザ・ブロック」といい、イギリスの悪ガキってフード付きの服よく着てますね。
トミーに警告して、一緒に行動することになる神父のエキセントリックなキャラが中々面白かったですね。静かな展開が続く中でこの破天荒な神父が盛り上げてくれていた気がします。トミーに好意を持っていて何かと世話してくれてた黒人の看護師さん可哀想だったな。トミーもあんなに親切にしてもらったのにあんまり振り返らないし。
この子供達の正体はイマイチわからなかったですね。ビルでジャンキーが生んだ双子が近親相姦で増えて行って、昔は人間だったみたいだけど今は人間じゃなく攫った子供達を感染させて仲間増やしてるみたいだけど、何を感染させてるのかイマイチわからなかったな。ビルそのものが悪になったみたいな印象受けたけど。
攫われたエルサを取り戻す為、神父や盲目で恐怖を感じ取る事が出来るダニ―少年とトミーがビルに乗り込んでいく終盤の展開は、怯えていたトミーがエルサとダニ―少年を守るため強くなっていく姿がアツくて良かったです。「僕らは見えてない」という台詞が恐怖を克服したんだなと感じさせましたね。地下室で攫われて化け物になりつつある子供達が映されるシーンは中々不気味でした。
全体的に静かで地味な作品ではありますが、アナイリン・バーナードの恐怖演技と陰鬱で寒々とした雰囲気漂う世界観など不思議と飽きずに見れました。