浦切三語

ミカエルの浦切三語のレビュー・感想・評価

ミカエル(1924年製作の映画)
3.6
なんか妙に面白かったな。エミール・ゾラとクロード・モネを足して2で割ったような名前の巨匠画家と、ウジェーヌ・ドラクロワと天使長ミカエルから拝借したような名前の画家の弟子。この二人の愛憎劇をシーザーとブルータスの関係性に見立てながら、セクシーな侯爵夫人だったり、妙に癖のあるジャーナリストの男だったりなど、個性豊かな登場人物たちを織り混ぜながら描いていく。女が出来た(しかも不倫)とたんに金遣いが荒くなったり、無断で巨匠から借りた高級グラスをそのまま借りパクしたり、事情があったにせよ巨匠から受け継いだ絵画を売りに出しちゃったり、ほんとどうしよーもない弟子だけど、その弟子がひとり立ちして終わるんじゃなく、女に甘やかされたまま大人になることなく終わるってのが結構衝撃。

師匠のゾレはゾレでどんどん名声を高めて巨匠としての地位を確固たるものにしていくけど、孤独に身を投じてまで己を苛め抜いても最後の最後まで、一番欲しかった「愛」を手にすることはなかった。「忘れていた。あれは私が彼にプレゼントしたんだよ」の台詞が物悲し過ぎてグッとくる。衣装や小道具も豪華だし、これカラーにしたらかなり凄いんでない?
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