神童と呼ばれたアレックス三部作、近親相姦を描き酷評を受けた「ポーラX」を経てたどり着いた12年ぶりのレオスカラックス監督の長編映画。眠りから覚め、映画スクリーンを見渡す彼の姿は「映画監督レオスカラックスの帰還」として目に映った。
「今年(2012年)中に撮影しないと頭がおかしくなると思ったんです。」とカラックスがインタビューに答えていたが、なるほど相当に病んでいた感は否めない。けれど、「ボーイミーツガール」のアレックスの台詞同様、「苦悩が僕の誇り」なのである。天才ぷりと完璧主義は健在だ。
「なにか素早く撮る必要があった」としているが、過去の作品ほど深く描きたい題材は残念ながら無かったのか、移ろう役柄にカラックスの「撮りたい」衝動が伝わってくる。
「ポーラX」までを純映画(純文学のような)とするならば、「ホーリーモーターズ」はいくつもの革新を含んでいる。12年ぶりの帰還にしてこのチャレンジ精神は嬉しい。ミュージカル映画とされている次作「Annette」にも期待。