阿房門王仁太郎

パコと魔法の絵本の阿房門王仁太郎のレビュー・感想・評価

パコと魔法の絵本(2008年製作の映画)
4.5
 役所広司の目はそれだけで身を焦がす憤りの炎を宿す、そしてその怒りが『リア王』のような世界に対するそれを感じさせる。
 とにもかくにも役所広司の「怒り」が炸裂する映画である。最初は境遇への不満からの八つ当たりだったのが、最後には友人の少女のどうしようもない運命への慟哭にまで昇華される。その涙は使者を蘇生させる霊薬ではないが何処までも美しく物悲しく、人の記憶に残り続ける。
 劇中の阿部サダヲじゃないがそれだけで人間における創造ってのはあるんじゃないかと思う。死人を蘇生させる呪文ではなく、その死を悼み、生き続ける為の鎮魂歌こそが創作なのではないか?改めてそれを思い出させてくれた映画だと思う。妻夫木聡も素晴らしかった。
阿房門王仁太郎

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