菩薩

エロイカの菩薩のレビュー・感想・評価

エロイカ(1957年製作の映画)
4.1
明るくコミカルでコント調ですらある前半、暗く陰惨で悲劇的な後半、占領下のポーランドにおける英雄浪漫譚についてのあれこれ。

もうめんどくさ〜い、とばかりにレジスタンスの訓練を飛び出した男が、あれよあれよと重要なミッションに巻き込まれていき、後一歩のところで英雄になりかける前半、偶然見つけたワインで泥酔して以降のグダグタっぷりと、それでもすんでのところで生き延びてしまうあたりが非常に面白い。

ナチのポーランド収容所が舞台の後半、縛りも緩い中で無気力に戦争終結を待ち望む新参将校たちと、未だに過去の栄光を捨てきれない古参将校たち、彼らによって英雄に祭り上げられた一人の男と、全てと距離を置きただ孤独を求める男の話。

結局戦時下において「作られる」英雄像などには大して意味はなく、戦争においての真の英雄とは生き残った者達なのであり、死んでしまってはなんの意味すら無い、むしろ英雄に向けられる好奇な視線が彼らを狂わし、また英雄自身すらも破滅に追い込むと、かなり冷淡な思想を感じる作品。これはおそらく本人の経験則によるものなのだろう、とりあえずwikiの生年月日はおそらく間違えている。
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