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セデック・バレ 第一部 太陽旗のgoalieのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

 台湾が日本統治下にあった1930年、山岳地帯で狩猟生活を基礎として暮らしてきた原住民族「セデック族」が、日本軍に対して打規模な反乱を起こした「霧社事件」。アイヌ民族に似た部族のコミュニティは「皇民化運動」によって、強制的に近代化を強いられたことが背景となっている。日本語教育が行われ、部族の人たちは日本人になることを強いられたが、駐留する日本兵には小馬鹿にされ、尊厳が奪われていく中で、男たちが立ち上がる。
 戦いは単に日本兵対セデック族という単一的な構図ではなく、日本人に恨みを持つ他の部族のとの共闘のほか、セデック族と狩り場を巡っていがみ合っていた部族が日本兵に加勢するなど、複雑。しかも、近代を象徴するように皆がライフル銃を器用に扱うが、彼らのルーツである弓矢、槍、手斧を自在に扱い、戦術的に敵を追い込み、圧倒的な人数差、武力の差をものともせず、勇敢に戦い、散っていく。首を狩り、血がしぶく凄惨なシーンが多いため、血が苦手な人には不向きかもしれない。
 セデック族が信仰のように信じてきた、死後に渡るという「虹の橋」。死んでも虹の橋でまた平和に暮らせると信じることが夫婦、親子を結束させる。戦士である男たちは戦い、女たちは男の邪魔にならないようにと命を自ら絶つ。山中で女、子供たちが次々と自決するシーンは、目に手を当てたくなるほど痛々しいが、独特の精神世界を見るようだった。
 4時間半に亘る超大作だったが、飽きるシーンがない。加えて、台湾人の演者はほぼ無名の役者や素人で構成され、晩年の頭目「モーナ・ルダオ」を演じたのは現役の牧師だというから、とても驚いた。語りは少ないが、厳しい表情と立ち振る舞いに迫力があり、どう見てもベテランの俳優としか言えない。
 また、作中に何度も挿入されるセデック語による歌や踊り、トンコリに似た楽器などが神秘的で、作品性を高めるフックになっている。
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