HAL8192

ブロンソンのHAL8192のレビュー・感想・評価

ブロンソン(2008年製作の映画)
3.6
行き場のない暴力。

有名になりたいから、ただそれだけが目的で暴力の力を行使する。それは自傷する自分自身だ。

とにかく過激な暴力とその報いを繰り返し繰り返し受け続ける。それでは何も変わらないとわかっていながら、そうしないと生きていけないように……

ストーリーは主人公の一生を過激な暴力描写と共に見せていく。そこに等身大の人間の弱さとそれでも理解されたい承認欲求とが入り混じっている。

主人公の承認欲求はとんでもなく、例え刑務所の中でも消える事のないものだ。それが人間味を見せているが、やっていることは狂人じみている。

やはり英国で最も知られた犯罪者の名にふさわしいその狂人っぷりはどうかしている。

けれど、映画を見ていくうちに彼の行動は理屈にはあっていないが、感情の面では理解できないでもない不思議な魅力がある。(盗んだ指輪である事をしでかす所など)

ただ、欠点としては暴力描写は悪として描く映画ではないので、度重なる暴力がむしろ肯定的に描かれているようにすら感じられた。(彼の生き様そのものが暴力の肯定なのだから仕方ないが)

また他にも彼のアートの才能がいかほどだったのかちゃんとは描かれていない、またアートと真剣に彼は向き合ったのかどうかが正直分からないで終わっている。(まあ、暴力が彼のアートだとするのが一番分かりやすい結論だが)

折れない心の持ち主で、何があっても自我を貫き通すこの心意気は確かに素晴らしい物があった。(例え暴力に訴えていても)
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