イマジンカイザー

狂武蔵のイマジンカイザーのレビュー・感想・評価

狂武蔵(2020年製作の映画)
3.9
公式サイトにて述べられた「77分ワンカット」は伊達ではなく、最低限必要な説明を終えたら、後はひたすら斬って斬って斬りまくる。延々と湧き続ける雑兵相手に、疲労以外のダメージを負わず戦い続ける宮本武蔵の姿を至高と取るか、はたまた代わり映えし辛い絵面を退屈と取るか。求めるモノの違いで評価の変わる映画だなあとはおもいます。

『仮面ライダーカブト』の視聴者なら、カッシスワームの人間態って言葉で総てが伝わるであろうアクション俳優・坂口拓。ステゴロが剣戟に変わってどうなるかと思いきや、ひたすら切り捨て、疲れ果てようと一瞬のうちに斬り伏せる姿は『動ける』俳優にしか出来ないなと。

劇映画や漫画なんかじゃ無視されるかあまり触れられない、それぞれの構えからの攻撃の必要性や理屈が、一対多人数戦という画で伝わってくるのは良かったなと。救援どころか休みもろくに取れないで、それでも剣技・腕力・その周囲の状況を使って切り抜ける様には惚れ惚れします。特に、武蔵の代名詞ともいえる二天一流の出しどころ・使いどころにはなる程、と思ったり。やっぱりリアルの二刀流ってきついんだなあ。

斬られ役の雑兵連中も、尺の都合見栄えの問題で時々無策に飛びかかって来るものの、基本的には徒党を組んでの複数戦。一に対し数で攻めて攻めまくる恐ろしさがイヤというほど描かれていて、そういう緊張感づくりはかなりツボでした。

場面転換も少なく、斬られ役の使いまわしもあり、途中から冗長になるという感想もわからなくはないのですが、ここまで来たらこの殺陣そのものが評価点。起承転結のある映画というよりこの剣戟にシビれろとでも言うようなストロングな構成。映画の形をとった芸術。

妥協も無ければ鬼のようなアクションの釣瓶打ち。是非是非劇場にてご鑑賞あれ。