さわら

ペーパーボーイ 真夏の引力のさわらのレビュー・感想・評価

4.0
脳髄を溶かすごとく、スクリーンから熱気が伝わってくる。アメリカ南部のスワンプと呼ばれる湿地帯は、見てるだけで不快感を覚える。それに併せ、ワニのグロテスクな解体シーンには目を背けたくなるほどの衝撃だ。ただそれ以上に衝撃なのは、この映画では今までアメリカで無き者とされてきた人々に光を当てている点ではないか。この映画には明るい、アメリカンドリーム的な人間は出てこない。みながどこか歪んでいる。黒人・ゲイ・プアホワイト、強くて明るいアメリカ北部の街並みしか知らない人たちにとって、この映画の舞台は衝撃的だろう。これもアメリカだ。前作「プレシャス」でも描いたように、常に監督・リー・ダニエルズは弱者に目を向けている。まるで真のアメリカを切り取ることに使命を感じているかのように。言うまでもないが、ニコール・キッドマンのビッチ役は完璧。ジョン・キューザックも粘つく不快な死刑囚を怪演。結局すごい不快な映画なのだが、とても好きな部類の映画である気がする。