三樹夫

きっと、うまくいくの三樹夫のレビュー・感想・評価

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
3.6
インドのエリート工科大学にランチョーという『メリー・ポピンズ』のメリー・ポピンズや『いまを生きる』のロビン・ウィリアムズみたいな学生が入学してきたことにより起こるドタバタと、卒業してから10年後にランチョーは今何をしているのだろうと探すという170分の大作コメディ映画。原題は3バカ。

映画内で描かれる大学は、インドの教育制度というかもっと大きくインドの社会構造そのものの縮図になっている。インドに限らずどこにでもある社会の縮図とも言える。強固なピラミッド構造が築かれ、ピラミッドの上へ登ることのみが奨励され、ピラミッドの上部にいる者は抑圧者の振る舞いをし、よりピラミッド構造を強固なものとしようとする。このピラミッド構造の中においては圧迫により苦しみ、死者まで生み出すこととなる。
学長のおっさんが分かりやすいぐらいの抑圧者となっており、圧迫により自殺者までだす。ピラミッド上部にいることをフルに利用し、立場的に下にいる者に対して絶対に歯向かってこないことをいいことに自分の権限を利用し抑圧する。学長以外にも他の教授や、入学パーティーで調子こいてた先輩などピラミッド構造を利用し抑圧してくる者がいる。
サイレンサーはそんなピラミッド構造における利口な振る舞いを理解し、何も考えずシステムに迎合し自分も上を目指せばいいという日和見主義者で、すかしっ屁が死ぬほど臭い。中身の意味も考えずとりあえず暗記しておけばいいというのが、何も考えずただシステムに迎合するサイレンサーをよく表している。
ピアの姉モナは抑圧への無自覚的な協力者だ。学長の抑圧により死者が出ていることに口をつぐみ、ピアが意を決してそのことを糾弾しようとする時にも止めなさいと学長をかばう。抑圧へ無自覚的な協力をしてジョイ・ロボという間接的に新たな犠牲者を生み出す結果になっている。自分の振る舞いが抑圧システムを支持し持続させ、新たな犠牲者を生み出し続けていることに全く気付いていない凡庸な悪だ。
そんなガチガチの抑圧システムの中にランチョーがやって来て、宮廷の道化師的な振る舞いをし抑圧者を茶化していく。作中のバカをやる行為は抑圧者に対して、なんか偉ぶってるけどこいつらマヌケだぞと、虚飾をはぎ取り王様は裸と教える。教育ってそんなんじゃないだろうと、『いまを生きる』の机の上に立たせる授業と同じようなことをし周りを目覚めさせていく。

良く言えば王道、ウェルメイド、クラシック、教科書通りの安心して観れるハートフルでホープフルな映画なのだが、悪く言えば古くて革新性は一切ない。60年代かみたいなギャグだし、ギャグに限らず2009年に作られてこの内容は周回遅れ感がある。
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