近年話題のインド映画。『ボリウッド4』として紹介されていた作品のひとつ。約3時間という長尺なため観れずにいたが、それを後悔するほどだった。
ストーリーの展開の仕方も丁度いい。 物語は10年前の大学におけるエピソードと現在のランチョーを探す3人の旅を織り交ぜながら、やがてファルハーン達も知らなかった彼の秘密に迫っていくという単純ながらも飽きさせないものとなっている。
エリートを生み出していくための教育制度、勉強さえできれば学を得ることができるようなインドの教育制度の姿を垣間見ることができる。勉強熱心だが、意味が分からなくてもただ教科書通りに暗記するチャトゥルの姿、ランチョーが疑問を抱いた他人を蹴落として競い合う大学制度、成績、就職するためだけの体制。そして学長の徹底して固執した教育観念。日本の大学でも同じことが言えると思う。単位を取るためだけの授業、就職さえできればそれでいいというような体制。胸にチクっと刺さるものがある。教育というのは難しい。インドの経済成長を支えたエリートを生み出す教育制度の改革。ひたすら成績を上げるために勉強すること、いいところに就職することが本当のエンジニアを生み出すことになるのか。
『3 Idiots』と題しているもののインド工科大学に入学できるほどで世間一般からすればエリート学生な三人。 そんな3人の描き方もうまい。平凡な家庭に産まれエンジニアになってほしいという父親の強い願いから彼が愛する動物写真への道を選べずにいるファルハーン。いわゆるカーストで最下層に位置するだろう家庭のラージューは工学への愛情があるものの恐怖心から自信もなく信仰に頼っている。成績は優秀で好きなことをとことん突き詰め、純粋な工学への想いからあらゆることで学長と対立してしまうランチョー。特に印象的なのはやはりランチョーだ。彼は自由奔放ながら成績はトップで発明の天才でもあり、芯の通った熱いハートをもっている。完璧すぎるといっていいほどの人格の彼が言葉にするセリフはどれも深く心に入ってくるのだ。
エンターテインメント性が抜群に優れている。バカないたずらや下ネタで笑わせたり、3人の熱い友情に心震わせたり、愉快な踊りに胸躍らせたり、ランチョーの身に何が起きたのかというサスペンスチックな場面もあれば、インドの教育問題と学生たちの苦悩(90分に一人が自殺しているという)に考えさせられたりと、映画における醍醐味がほぼ全部詰まっている。ラストシーンの爽快さ(ロケーションも素晴らしい)はすごい。
学生は絶対に観た方がいい映画。こんなに学ぶことが多いとは驚いた。
「心はとても臆病だから麻痺させる必要がある。その時は胸に手をあてこう唱えるんだ。」
「アールイーズウェル(きっとうーまーくいく)」
目覚ましい経済成長とともにインド映画が世界に台頭してくる日も遠くないと思わせる映画。