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鉄西区のマのレビュー・感想・評価

鉄西区(2003年製作の映画)
4.7
「貧すれば鈍する」と言うけど、その「鈍」にこそ人間の(汚い部分も含めた)良い部分が詰まっていると確信してるような視点。でも、全然「貧」の地獄は映り続ける。

労働という時間的にも、物理的にも巨大過ぎる存在にひたすら飲み込まれ続ける 殆ど怪獣映画みたいなスケール感の第1部から、第2部はもはや劇映画?前半のGummoみたいな荒々しくて危険な青春から話は一転し、立ち退きを拒否する人々のただただ苦しい静かな闘いが無限に続く。デュエットするシーンはもうミュージカル映画じゃん。冒頭のくじは全体を通して見るとそういう風刺にしか見えない。

より個人的な話に目を向け、今までよりも陰湿な雰囲気の中で 労働や貧困の隙間に生きる意味を見出そうとする第3部も含めて思うけど、結局映画に出てくる人々をそこまで追い詰めたヤツらは最後まで明確に出てこない(社長ですら言及されるのみ)。9時間かけて只管に「貧」の人々の営みを映すことは 中国における貧困、搾取問題や文化大革命、日本占領の影を突きつけているのは勿論、(普遍的なテーマで問題提議を誤魔化さないのは前提として)自然と 苦しみしかない社会と歴史の中で生存する意味を嫌でも考えなきゃいけない気がする。
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