psychedelia

春香伝のpsychedeliaのレビュー・感想・評価

春香伝(1980年製作の映画)
5.0
北朝鮮の映画はどれも「偉大なる大将軍様」を讃える文言が出てきて嫌になっちゃうのだが,本作は時代劇であるためか,直接にはその科白(もしくはモノローグ)は現れない。ただ,クライマックスの展開など,体制側としては金日成伝説に擬えたいのだろうけど。とはいえ,これは朝鮮半島で有名な,それこそ日本でいうところの『かぐや姫』くらい有名な物語らしいので,本来はそういうプロパガンダ的意図とは関係のないものだろう。
全体的に,本当に80年製作か,と疑いたくなるくらい古色蒼然とした作品だが,作りが丁寧なので好感は持てる。人物描写もいかにも古典らしくはっきりと描き分けられている。中でも名家の使用人(日本でいうと雑色なのだろうか)の性格描写が出色で,身分の極めて低い存在ながら良き主人に仕えたためにのびのびと暮らしているという,作中で最も人間らしく自由に描かれたその魂を羨ましくさえ思えてくる。これは最近『かぐや姫の物語』においてかぐや姫の付き人の少女にも二重写しに見えた。人間が最終的に羨むのは結局こういう存在なのかもしれない。
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