psychedelia

穴のpsychedeliaのレビュー・感想・評価

(1957年製作の映画)
5.0
市川崑といえば泉鏡花原作の映画化など, 「日本的伝統美の中に耽溺した」映画作家というイメージを勝手に持っていたのだけど, こんなハイテンポでスタイリッシュなサスペンス・コメディも撮っていたんですね。
ストーリーはフランク・キャプラの『群衆』をモチーフにしてそう。モチーフだけでなく, まくし立てる台詞回しもキャプラ流。登場人物が唐突に人間論を(衝動的に発される場面にも拘らず, 凡そ自然でなく, 前以て用意していたような明哲な論理で)語りだすところなども, 時代を感じさせて面白い。このころの藝術に傾倒した若者はみんな観念的な思考法が板に付いていたんだろうね。ドストエフスキーの小説の登場人物みたいだ。
一癖も二癖もある登場人物たちがまた佳い。まるで高橋留美子の漫画みたいだ。しかもそれでいてシビアな人間的側面も見せてくれる。画面が硬質なのが幸いしてるんだろうね。最新のカメラで撮りなおしたらリアリティの欠片もないマンガになると思う。クラシック万歳を唱えたい。
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