愛されるよりも愛したいマヂで
ラジオ女優のフェリツィアはパリ行きの飛行機の中でドイツ占領時代の出来事を回想する。
当時舞台女優であったフェリツィアは俳優のヴィクトルに想いを寄せていた。ドイツに占領されたことで舞台の継続が困難に。
そして彼女はカフェで働きはじめる。ある日カフェにいたヴィクトルは憎きドイツ軍の将校に阿るかつての仲間ペーテルスを見るやいなや闘魂注入ビンタ。カフェを退店したペーテルスは何者かによって射殺される。直前にトラブルを起こしたヴィクトルは当然犯行を疑われてしまう。フェリツィアはそんなヴィクトルを自宅に匿うが……。
ポーランド派の異端と言われるヴォイチェフ・イェジー・ハス監督の代表作。
主人公の語りをベースに戦争が残した心理的な外傷を深掘りしていくかなりプライベートな作風。
そもそもポーランド派をワイダくらいしか複数作品観ていないのでその異端ぶりはいまいち理解できなかったけど、私的なナラティブ中心の構成はこの時代には主流ではないことはたしか(というか今でも)。
画は洗練されていて、特に引きのカットが美しい。登場人物はクローズアップが多いけどふとした時に描かれる引きの画の描写力たるや。少しロッセリーニを想起した。
あえて瞬間を長く見せない、悲劇の余韻を残させないラストには痺れる。CAさんの笑顔がなんとも爽やか。