みやび

ペトラ・フォン・カントの苦い涙のみやびのレビュー・感想・評価

4.8
ある症例について 愛の不可能

密室に共存する人間の美醜。
巧緻な作劇、舞台のような照明と装飾的な衣装、絵画のような色彩設計、緻密に計算されたカメラワーク、これらによって作り出される煌びやかながらも退廃的な映像が、愛の歪みを繊細に映し出していた。
愛による孤独と絶望。
サディズムとマゾヒズムを併せ持った矛盾の愛。
愛することは自由、同時に愛することは不自由。
愛による繋がりを望むこと、つまりは他者を所有しようとすることが愛の歪みだとするならば、真実の愛の獲得は簡単なことではないと思わされる。
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