りょうた

ホワイトハウス・ダウンのりょうたのレビュー・感想・評価

ホワイトハウス・ダウン(2013年製作の映画)
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『ホワイトハウスダウン』

破壊王、(一度壊した)懐かしの場所に里帰り。

義務的&軽薄な人間ドラマは相変わらずながら、個々人の魅力や力強さ/キャストのイメージを上手く利用した展開等、演技・脚本としての上手さは強い。

同時期の類似企画である『エンドオブホワイトハウス』と違い、主人公に多くを背負わせ過ぎず、より『ダイ・ハード』に近づけ、敵の動機により情勢や時事性を含ませた。
あらゆる点において実は抜け目なく、些細な台詞や小道具が後半の展開に活かされたりと、小技の効いた諸要素が仕込まれていて、楽しさに笑みが零れる。
中盤での大統領安否不明状態での、最高権力の移動という一種の宮廷陰謀劇な流れも、同時期の日本に近く現実味があって苦笑いしながらもスリルを感じさせてくれる。
ホワイトハウス陥落描写も、『エンドオブ~』以上に戦略的で静かなのがリアルだ。「敵が攻めてきた!」ではなく、今作は"考えvs考え"なのを踏まえた描写とも言える。

チャニング・テイタムとジェイミー・フォックスのコンビ感も楽しく、テイタムの機動性とフォックスの思慮が互いに否定でなく協調されていくところにある種の理想を見て取れるかも。
少なくとも今作のソイヤー大統領は、過去の映画米大統領に肩を並べる気高さや賢さをフォックスが体現してくれているから、理想的過ぎだとしてもカッコよく感じる(序盤でテイタムの娘に笑顔と明瞭な声、本人に小声を使うあたりの公私の切り替えと礼儀の共存は最高)。

とはいえ流石エメリッヒ…雑なところはトコトン雑だ。
先に書いた陰謀劇的展開の顛末を一切サスペンスとして活かしてなかったり、序盤で主人公と関係が示唆される人物を事も無げに殺してフォローも無しだったりと、電池切れかのように後半は粗が目立ち始める。
そこを何とか、マギー・ギレンホールやリチャード・ジェンキンスなどの名優が支えてギリで立っている感は否めない(特にジェンキンスは最高…活かしきれなかったけど)。

ただそれはいつもの事。映画的でド派手とはいえ、比較的地に足の着いたスケールの危機に、美味めの脚本がくっついたお得仕様な一本だ。

映画の大統領は現実の鏡でもある。今作が反映し、その後の大統領に何が反映されたかを思う意味でも、なかなか捨てがたい。
何より、普通に面白い。十分じゃないですかdd
りょうた

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