うえびん

ミークス・カットオフのうえびんのレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
4.1
地平線の彼方へ

2010年 アメリカ作品

西部劇の概念が覆される作品

空と大地
ただただ黙々と歩く人たち
幌馬車を引く水牛と馬…

一場面一場面が絵画のように美しい

激しい戦いが無い
誰も死なない

男性ではなく女性にフォーカスがあたる

1845年
3000キロのオレゴン・トレイル
夢の地への移住を目指す三家族
西へ西へと向かう苛酷な旅

近道を知る路先案内人のミーク
「男の本質は破壊」
「男は不正を排除し破壊を命じる」
と言い放つ

旅の途上で捕らわれたインディアン
ミークから悪名高いカイユース族と罵られる

彼が話す言葉はナバホ語か
天と地に祈りを捧げる

『リトル・トリー』
(フォレスト・カーター)


見てごらん、あの山を
うねりながら高く高く盛り上がる山を。
あれは新しい朝を孕んだ大地のお腹
今彼女は真っ赤な太陽を出産するところだ。

雲のかたまりが彼女のお尻を
なでまわすものだから
木々の枝もやぶも
ひそやかな吐息を漏らしている。

小暗い谷間は彼女の子宮
聞こえないか、胎動する命のつぶやきが
感じないか、彼女の体温を、甘い息づかいを
轟きわたる交尾のリズムのこだまを。


アメリカ先住民
それを破壊した西部開拓民
過酷な旅の心を支えるキリスト教信仰

両者への複雑な思いが湧く

ミークへの猜疑心をもつエミリー
インディアンへの恐怖心を湧かせるミリー
無邪気なジミーと母のグローリー

「女の本質は混沌」
「創造と無秩序による混沌が生命を生み出す」(ミーク)

破壊の先に
創造と無秩序による混沌が生まれ
新たな生命が生み出される

アメリカという国が想起される

地平線の彼方へ向かう
インディアンの背中を見つめる
女たちの視線の先には
何が見えていたのだろう
うえびん

うえびん