ケリー・ライカート監督作。
米インディペンデント映画界を代表する女性監督:ケリー・ライカートが『ウェンディ&ルーシー』(2008)に続きミシェル・ウィリアムズを主演に迎えて撮り上げたウエスタンドラマです。
1845年のオレゴン州を舞台に、新天地を求めて西進する移民の3家族の旅路を描いたロードムービーです。実在の移民ガイドであるスティーヴン・ミークの案内により荒野を幌馬車でゆっくり進む移民家族たちが、日が経っても一向に目的地に辿り着けず不安と焦燥を募らせていく中、道中捕えた孤独なインディアンの男に道案内をさせ活路を見出すというお話です。
日に日に増幅する飢えと渇きと仲間同士の不信感に襲われながらも名も無きインディアンの男を頼ってひたすら西へと進む移民家族の過酷な開拓路のゆくえを、砂埃が舞うほど乾き切った広大な荒野の原風景の中に静かに映し出した異色ウエスタンとなっています。そして、西部劇にしては珍しく、夫に黙って付き従う存在の無力な女性を主人公に据えた上で、弱者である女性の確固たる意思の表明と精神的自立の芽吹きを見つめた“女性映画”の風味が付与されています。
19世紀アメリカで繰り返された移民家族による不安と希望の入り混じる過酷な西進&西部開拓の一端をリアルに再現したウエスタンドラマで、主演のミシェル・ウィリアムズが物憂げながら逞しさを湛えたヒロインを好演しています。